循環器リファレンス

DESIGN PRINCIPLES

設計方針

How This Reference Is Built

本ツールをどのような方針で設計・実装しているかを記載しています。表示された内容をどこまで信頼してよいかは、作り手の説明ではなく、作り方によって決まります。その作り方を利用者ご自身が確かめられるようにするために公開しています。

最終更新:2026-08
01

原典に照合する。独自の判定を持たない

本ツールが表示するのは、入力された値が原典のどの区分に該当するかだけです。運営者が独自に定めたスコア、重み付け、閾値は一切用いていません。

この制約には理由があります。独自のアルゴリズムを持った瞬間、利用者はその妥当性を検証できなくなり、表示された結果を信じるか信じないかの二択になります。原典の基準をそのまま照合する構成であれば、利用者は原典に当たって突き合わせることができます。検証できることを、正しさの根拠にするという考え方です。

そのため各ツールには、準拠した原典、参照した表番号または項目、最終更新日を明示しています。計算過程も画面上に展開し、どの入力がどの配点に効いたかを追えるようにしています。

02

実装できないものは、実装しない

収載するかどうかの判断基準を、臨床的な重要度ではなく、原典の入手可能性に置いています。

心臓手術のリスク評価では、JCS 2020 が STS スコア・EuroSCORE・JapanSCORE の 3 つを併記しています。臨床上はいずれも参照されるものですが、本ツールが計算機として実装しているのは EuroSCORE II のみです。

EuroSCORE II は原著論文(Nashef 2012)に回帰係数が公表されており、同じ式を再現できます。一方、STS スコアの係数は一般に公開されておらず、JapanSCORE も計算式が非公開です。係数を推測して組めば、TAVI と SAVR の選択に用いられる死亡率予測が、誤った値として画面に表示されることになります。

そのため残る 2 つについては計算を提供せず、3 スコアの位置づけを整理して公式計算機へ案内する参照ページを別に設けました。同ページには、計算を提供しない理由も明記しています。

収載していない項目があることは、機能の不足ではなく判断の結果です。何を載せたかと同じだけ、何を載せなかったかが本ツールの内容を示します。

03

入力値をサーバーに送らない

規約上の約束ではなく、サーバー設定として実装しています。

すべての計算は利用者のブラウザ内で完結します。入力された数値および選択された所見は、運営者を含むいかなるサーバーにも送信・保存・記録されません。

これは運用上の努力目標ではありません。本サイトは全ページに次の Content-Security-Policy を配信しており、ページから外部への通信そのものがブラウザ側で遮断されます。

connect-src 'none';  form-action 'none';  object-src 'none';  frame-ancestors 'none'

connect-src 'none' は通信を送る API を封じ、form-action 'none' はフォーム送信を封じます。仮に将来、送信処理を誤って書き込んだとしても、この設定が残っているかぎり送信は成立しません。実装ミスによる情報流出が起こらない構成にしてあります。

あわせて、本ツールには患者を特定しうる情報(氏名、生年月日、患者 ID 等)の入力欄を設けていません。計算に必要な数値と所見のみを受け取る設計です。

なお、画面表示に用いる書体の配信のみ外部サービスを利用しています。この範囲で通信情報が当該サービスの提供者に送信されることがあります。詳細は利用規約・免責事項第 5 条をご参照ください。

04

ガイドライン改訂に追従できる構造にする

診療ガイドラインは改訂されます。改訂のたびに各ページを個別に書き換える構成では、更新漏れが必ず生じ、古い基準が残ったページが混在することになります。

そのため基準値・配点・判定区分は、ツール種別ごとに 1 つのデータファイルへ集約しています。画面側のコードは、そのデータを読んで表示するだけの役割に限定しています。改訂時は、データファイルの該当箇所を書き換えれば、関連するすべてのページに反映されます。

そのうえで各ページに準拠版と最終更新日を表示し、利用者が参照時点の版を確認できるようにしています。ただし、医学的知見は継続的に更新されるため、ご利用時点で最新であることを保証するものではありません。実際の診療にあたっては、必ず原典となるガイドライン本文をご確認ください。

05

単位と桁の取り違えを、構造的に防ぐ

循環作動薬の投与速度換算における具体例です。

投与量の計算で起こる事故は、計算式の誤りよりも、単位系の取り違えと桁の入力ミスによるものが大半を占めます。そのため換算ツールでは、入力の自由度をあえて下げています。

  • 薬剤ごとに単位系を切り替える。γ(µg/kg/分)で表現する薬剤、単位/分で表現する薬剤(バソプレシン)、mg/時で表現する薬剤(ニコランジル)、ng/kg/分で表現する薬剤(エポプロステノール)が混在します。薬剤を選択すると、その薬剤の単位ラベルに切り替わります。
  • 体重換算しない薬剤では、体重欄そのものを消す。入力欄が存在しなければ、体重を掛けた値を入れる誤りは発生しません。
  • 常用量の目安から外れた値には警告を出す。組成の入力ミスや桁の誤りに気づくための機構です。用量の推奨ではありません。
  • 用いた体重の種別を出力に残す。実測体重か推定体重か、推定であればどの式によるかを、コピーされるテキストに含めています。後から判別できるようにするためです。

体重換算の基準についても、いずれかを「正しい」とする書き方を避けています。標準体重・実測体重のどちらを用いるかは施設や薬剤によって運用が分かれるため、選択が結果を変えるという事実だけを示し、判断は利用者に委ねる形にしています。

06

収載範囲と原典

各ページにも同じ情報を表示しています。ここでは一覧として掲げます。

ツール準拠した原典
弁膜症 8 疾患の重症度AS / AR / MS / MR / TS / TR / PS / PR2020 年改訂版 弁膜症治療のガイドライン(JCS 2020)
CHADS₂ / CHA₂DS₂-VAScGage BF, et al. JAMA 2001 / Lip GYH, et al. Chest 2010
HAS-BLEDPisters R, et al. Chest 2010
EuroSCORE IINashef SAM, et al. Eur J Cardiothorac Surg 2012;41:734-745
手術リスクスコアの位置づけ計算は行わない参照ページJCS 2020 の記載にもとづく整理/公式計算機への案内
H₂FPEF スコアReddy YNV, et al. Circulation 2018;138:861-870
改訂 Duke 診断基準Li JS, et al. Clin Infect Dis 2000
急性期 DIC 診断基準日本救急医学会 DIC 特別委員会(2005)
クレアチニンクリアランスCockcroft DW, Gault MH. Nephron 1976 / 日本腎臓学会 CKD 診療ガイド
DOAC の用量調節各薬剤の添付文書
SGLT2 阻害薬と腎機能各薬剤の添付文書
循環作動薬の投与速度換算(ガンマ計算など)15 剤製剤濃度・組成にもとづく単位換算(判定を含まない計算)
07

本ツールの位置づけと制作

本ツールは医療従事者向けの情報提供です。診断、重症度の確定的な判定、治療適応の決定を行うものではありません。最終的な判断は担当の医師およびハートチームが行うべき事項です。

運営者は本ツールを、薬機法上の医療機器プログラムに該当しないものとして設計しています。公開されたガイドラインの基準値をそのまま表示・単純計算する構成とし、独自のアルゴリズムや重み付けによる判定を行わず、計算過程と根拠を画面上で検証できる形式を採用していることが、その根拠です。

本ツールは、循環器学会カレンダーの運営者(ひつじ医師)が設計・制作しています。運営者および連絡先は利用規約・免責事項第 11 条に記載しています。

記載内容の誤りや不明確な点にお気づきの場合は、利用規約に記載の連絡先までご指摘いただけますと幸いです。