循環器学会カレンダー循環器ウィークリー › 2026年9月5日号

循環器ウィークリー · 2026年 第35週

心不全の分類が変わった週 ── ESC 2026 の1週間

対象期間 2026年8月26日 – 9月2日 公開 2026-09-05 項目数 22 件

今週は事実上「ESC 一色」。ミュンヘンで3本の新ガイドラインと59本の Hot Line 試験が発表され、企業側の発表もそこに合わせて集中した。

今週の3行まとめ

  1. 01
    ESC が心不全の分類を書き換えた

    HFmrEF が廃止され、HFrEF(LVEF 50% 未満)と HFpEF の2表現型に整理された。駆出率を前提に設計されてきた薬剤・デバイスの対象母集団が、そのまま引き直されることになる。

  2. 02
    Repatha が一次予防で総死亡を 20% 減らした

    VESALIUS-CV は12,000人超の高リスク患者で、PCSK9 阻害を「初回イベントより手前」へ押し上げた。臨床の議論であると同時に、支払者の議論でもある。

  3. 03
    公的保険者が、自らのカテ件数を減らす試験に資金を出した

    オランダ国立医療保険機構(Zorginstituut)が資金提供した FUSION 試験で、FFRCT により不要な侵襲的冠動脈造影が 44% 減少。HTA 機関がエビデンスを自前で作り始めた形で、他の単一支払者市場にも波及しうる。

01 / 規制・市場

承認、企業動向、市場構造

7 件
2026年8月28日
CE マーク

Abbott、Amulet 360 で欧州へ

次世代左心耳閉鎖(LAAO)デバイス Amulet 360 が CE マークを取得。非弁膜症性心房細動における脳卒中リスク低減が対象で、LAAO の世代更新は今回も欧州が米国に先行した。

出典:Cardiac Interventions Today · 確認 2026-09-05 · ※二次情報のみ
2026年8月28日
CE マーク

HighLife、僧帽弁 Clarity で欧州承認

HighLife SAS が、同社の TMVR システムで用いる Clarity 弁の CE マークを取得。TMVR は依然としてプレーヤーの少ない領域であり、商用承認を得たシステムがもう1つ増えた意味は小さくない。

出典:Cardiac Interventions Today · 確認 2026-09-05 · ※二次情報のみ
2026年9月1日
企業動向

Shockwave Medical、J&J MedTech ブランドへ統合

Shockwave は社名を手放し、2026年10月1日から Johnson & Johnson MedTech として運営される。血管内砕石術(IVL)は「circulatory restoration solutions」という括りに再配置され、2024年買収時に残された独立ブランドの最後の痕跡が消える。

出典:Cardiac Interventions Today · 確認 2026-09-05 · ※二次情報のみ
2026年8月28日
製品投入

Philips と Imricor、MR ガイド下インターベンション室を発表

Philips の 1.5T MRI プラットフォームに Imricor の iMR システムとコンサマブルを組み合わせた心臓インターベンション用 MR ラボ。EP を透視から離脱させる、これまでで最も明確な商用の一手。

出典:Cardiac Interventions Today / DAIC · 確認 2026-09-05 · ※二次情報のみ
2026年8月28日
製品投入

GE HealthCare、Vivid 心血管超音波を刷新

Vivid ポートフォリオに3機種を追加、ESC の展示に合わせた投入。エコー機の世代更新は、画像診断大手が AI ファーストの新規参入から設置ベースを守るための戦場になっている。

出典:DAIC · 確認 2026-09-05 · ※二次情報のみ
8月26日 – 9月2日
PMDA · 該当なし

日本:期間内に循環器領域の承認公表なし

PMDA の当該週の公表内容は、プログラム医療機器(SaMD)相談スケジュールの更新(8月31日)、安全性情報の改訂(8月28日)、研修資料の更新(9月1日)で、循環器に特化した項目はなかった。直近の循環器関連の英文審査報告書は Esprit BTK(8月14日公表)で、これは対象期間外。

出典:PMDA What's New · 確認 2026-09-05
2026年9月1日
保険償還 · 日本

中医協の8月了承分が収載 — 循環器製品は含まれず

8月5日の中医協総会で保険適用が了承された医療機器3品目が9月1日付で収載された。区分 C1 の止血関連製品が中心で、今回の収載に循環器デバイスは入っていない。

出典:厚生労働省 / 中医協 保険適用資料 · 確認 2026-09-05

市場の背景 — 今週のニュースではなく前提情報

  • 2026 上期
    メドテックの案件総額は約 365 億ドル。買い手の関心はストラクチャルハート、パルスフィールドアブレーション(PFA)、血栓回収といった循環器カテゴリーに集中している。
  • 2026年1月
    Boston Scientific による Penumbra の 145 億ドル買収合意が、下記の新規参入各社が挑む血栓回収カテゴリーの価格基準になっている。
  • 2026年8月
    Johnson & Johnson の Automated Impella Controller リコールに関連して3件の死亡が報告された。FDA の追加措置の有無は継続監視が必要。
02 / 臨床

ガイドライン、学会声明、試験結果

10 件
8月28日 – 31日
学会ESC 2026

ESC Congress 2026(ミュンヘン)— 12 の Hot Line セッションで 59 試験

ESC は Late-Breaking 演題の応募数が過去最多だったと発表し、9月2日の閉会リリースでも「記録的」と総括した。本セクションの Bayer の報告を除く全項目が、この学会で発表されたもの。

出典:ESC Press Office · 確認 2026-09-05
2026年8月28日
ガイドラインESC 2026

心不全ガイドライン、中間区分を廃止

2026年版 ESC 心不全ガイドラインは HFmrEF(LVEF 41–49%)を削除し、HFrEF(LVEF 50% 未満)と HFpEF の2表現型とした。予防と早期認識に重心を置いたステージ分類も導入され、試験デザイン・添付文書・償還方針の書き方そのものに影響する構造的変更となる。

出典:ESC / HCPLive · 確認 2026-09-05
2026年8月28日
ガイドラインESC 2026

さらに2本のガイドラインと、心筋梗塞の新定義

ESC は心臓リハビリテーション、および心血管疾患と慢性腎臓病(CKD)に関する2026年版ガイドラインを同時公表。あわせて「心筋梗塞の第5次普遍的定義」も発表された。MI の定義変更は、現在登録中の全試験のエンドポイント判定に波及する。

出典:ESC · 確認 2026-09-05
2026年8月31日
試験データESC 2026

VESALIUS-CV:evolocumab が総死亡を 20% 減少

心筋梗塞・脳卒中の既往がない高リスク患者 12,000 人超で、Repatha はプラセボ比 20% の総死亡減少を示し、心血管死・非心血管死のいずれも減少した(Circulation 同時掲載)。先行して報告された主要結果では 3-P MACE 25% 減、心筋梗塞 36% 減、LDL-C 中央値 45 mg/dL 対 109 mg/dL。

出典:Amgen / DAIC / AJMC · 確認 2026-09-05
2026年8月28日
試験データESC 2026

FUSION:FFRCT が不要な冠動脈造影を 44% 削減

オランダの12施設で安定狭心症患者 528 人を無作為化。不要な侵襲的冠動脈造影(ICA)は HeartFlow FFRCT 群 22% に対し CCTA 単独群 39%(p<0.001)、ICA 全体でも 61% から 43% に低下した。JACC 掲載、資金提供はオランダ国立医療保険機構。

出典:HeartFlow / DAIC / Medical Device Network · 確認 2026-09-05
2026年8月31日
試験データESC 2026

Abbott の TactiFlex Duo、12か月でも成績を維持

PFA と RF の両エネルギーを扱う開発中カテーテルの FlexPulse Global IDE 12か月データが主要有効性評価項目を達成。74.6% の患者が不整脈の記録・薬剤変更・再手技なしで経過した。単一モダリティのプラットフォームではなく「患者ごとにエネルギーを選べる」ことが Abbott の主張。

出典:Abbott / Clinical Trials Arena · 確認 2026-09-05
2026年8月31日
試験データESC 2026

開心術時の左心耳閉鎖、有益なのは高リスク例のみ

ESC で発表されたデータでは、開心術に併施する左心耳閉鎖の恩恵は高リスク集団に限られ、「全例併施」の運用を支持しない結果となった。同じセッション群では、心臓再同期療法(CRT)におけるターゲット・リード留置が標準留置に対して優越性を示さなかった。

出典:ESC Press Office · 確認 2026-09-05
2026年8月31日
試験データESC 2026

診療を動かす陰性・中立結果が相次いだ

CARDIO-TTRansform:eplontersen は全体集団で心血管死および再発イベントを有意に減らさなかった。市民救助者の出動要請は心停止後の短期生存を改善せず。複雑病変のステント留置ガイドでは2つのイメージング手技が同等だった。一方 SINGLE-AF は陽性で、脳卒中中等度リスクの心房細動において DOAC が抗凝固なしを上回った。

出典:ESC Press Office / Cardiovascular Business · 確認 2026-09-05
2026年8月31日
試験データESC 2026

ウェアラブル、高齢梗塞例、石灰化スコア

ウェアラブル心電モニターが失神後の不整脈診断率を改善。EVAOLD は高齢の心筋梗塞患者の治療方針に関する指針を示した。冠動脈石灰化スコア(CAC)のリスク評価における有用性を補強する新データも発表された。いずれも治療そのものより診断経路を動かす内容。

出典:ESC Press Office · 確認 2026-09-05
2026年8月30日
試験データ

Bayer、第III相 REVEAL の PET トレーサー結果を報告

開発中の PET 放射性トレーサーに関する第III相 REVEAL 試験の初期詳細結果を発表。心臓 PET は画像診断の競争のなかで最も静かな領域であり、設置容量も最も限られている。

出典:DAIC · 確認 2026-09-05 · ※二次情報のみ

保険償還の決定 — 今週は新規なし

対象期間内に循環器領域の償還決定は出ていない。米国で動いている案件は引き続き、7月14日公表の 2027年 Medicare Physician Fee Schedule 提案規則(循環器サービスは約 1% 増の見込み、換算係数は適格 APM 参加者で $33.1693 へ低下)と、8月5日の 2027年 IPPS 最終規則(質報告要件を満たす病院の外来支払いは 2.4% 増)。最終規則は2026年末までに確定する見通しで、次の判断ポイントはそこ。

償還に関わる動きとして唯一実質的だったのは上記の FUSION である。国のHTA機関が、自らの手技件数を減らす試験に資金を出したという構図は、他の単一支払者市場でも起こりうるテンプレートとして見ておく価値がある。

03 / 新規プレーヤー

新興企業と競争環境の変化

5 件
2026年8月31日
初回データ

Medera、遺伝子治療を HFpEF へ持ち込む

冠動脈内投与の AAV1.SERCA2a 遺伝子治療 SRD-002 の MUSIC-HFpEF 第1/2a相 12か月データ。10例中8例で心内充満圧が正常化基準を満たし、運動時 PCWP は約 30% 低下、NYHA III 度の6例中5例が II 度へ改善、KCCQ スコアは平均 17.8 点改善。治療関連の重篤有害事象はなし。発表は Duke の Marat Fudim。

出典:Medera / GlobeNewswire · 確認 2026-09-05
2026年8月28日
新規参入

Imricor、Philips との提携で販路を得る

MR ガイド下 EP を手がける小規模企業が、Philips ブランドのラボ提供の中に自社コンサマブルを組み込んだ。この規模の企業にとっては、単発の規制承認より OEM 販路のほうが重い。

出典:Cardiac Interventions Today · 確認 2026-09-05 · ※二次情報のみ
2026年8月28日
新規参入

HighLife、欧州 TMVR の商用プレーヤーへ

Clarity の CE マーク取得により、HighLife は臨床段階の名前から競合の一角へ移った。大手が TAVR より繰り返し苦戦してきた領域であり、承認後に実際の症例数が伴うかが次の観察点。

出典:Cardiac Interventions Today · 確認 2026-09-05 · ※二次情報のみ
2026年9月1日
ピボタル完了

Innova Vascular、肺塞栓症の TRUST 試験で登録完了

Laguna 血栓回収システムのピボタル試験の患者登録が終了。Boston Scientific が1月に Penumbra を 145 億ドルで買収合意した、まさにそのカテゴリーへの参入であり、混雑した市場で差別化された結果を出せるかが唯一の入り口になる。

出典:Cardiac Interventions Today · 確認 2026-09-05 · ※二次情報のみ
2026年8月
資金調達

8月を通じて循環器への資金流入は継続

7日間の対象期間からはわずかに外れるが、ウォッチリストに影響する動きとして——Renata Medical がシリーズ D で 2,500 万ドルを調達(8月19日)、Jupiter Endovascular が Catalin Toma を CMO に招聘(8月13日)、AngioInsight が AngioAI+ の SMARTFLOW 試験で初回症例を実施(8月7日)、Spire が心肺領域の遠隔モニタリングでシリーズ B 1,000 万ドルを調達(8月4日)。

出典:MDDI / Cure Medtech Funding Tracker · 確認 2026-09-05 · ※二次情報のみ

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