循環器学会カレンダー循環器ウィークリー › 2026年9月12日号

循環器ウィークリー · 2026年 第36週

線引きが変わった直後の一週間──HFmrEF廃止と、40%で組まれた2つの試験 ── ESCがHFmrEFを廃止 ── 境界は LVEF 50% の一本へ

対象期間 2026年9月1日 – 9月9日 公開 2026-09-12 項目数 7 件

前号では「心不全の分類が変わった週」としてESC 2026の新ガイドラインを取り上げました。今週はその直後の1週間にあたります。結論から言えば、新規メカニズムの薬剤が連敗し、デバイスは着実に前進した週でした。そして心不全領域では、変わったばかりの線引きと、古い線引きで組まれた試験のズレが、いきなり可視化されることになりました。

今週の3行まとめ

  1. 01
    Novartis / Ionis「pelacarsen」Phase IIIで主要評価項目を達成できず

    Lp(a)HORIZON試験(8,323例)で、心血管イベントの複合エンドポイント(心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・緊急冠動脈再血行再建による入院)においてプラセボに対する有意差を示せなかった。重要なのは、Lp(a)値そのものは低下していたという点。「Lp(a)を下げればイベントが減る」という仮説そのものが問われる結果となった。NovartisのChief Medical Officerは「これは我々が期待していた結果ではない」とコメントしている。

  2. 02
    Novo Nordisk「ziltivekimab」心不全試験2本を無益中止

    IL-6を標的とする抗炎症薬について、データモニタリング委員会がHERMES試験(4,900例)・ATHENA試験(673例)は先行するZEUS試験と異なる結果に至る可能性は低いと判断し、早期終了となった。9月4日に治験担当医師へ通知、9月7日に報道。心筋梗塞後の急性期を対象とするARTEMIS試験は継続予定で、読み出しは2027年上半期の見込み。

  3. 03
    Abbott「TactiFlex Duo」FDA承認を取得

    PFA(パルスフィールドアブレーション)とRF(高周波)を1本のカテーテルで切り替えられる、デュアルエナジー型のアブレーションカテーテル。複雑な心房細動症例で、患者ごとにエネルギー源を使い分けられる。承認はFlexPulse IDE試験に基づいており、同データはESC Congress 2026で発表、EP Europace誌に掲載されている。Abbottにとって直近1年強で5件目となる電気生理学領域の主要承認。

2026年9月12日号 の主な出来事(図)
01 / 心不全

ガイドライン改定から、最初の一週間

2 件
2026年9月9日
試験データESC 2026

AstraZeneca「AZD5462」LUMINARA試験、Phase 2bで良好な結果

RXFP1(relaxinファミリーペプチド受容体1)を活性化する経口薬。10カ国で実施され、コホートごとに異なる指標で評価された(24週時点、20 / 80 / 360 mgの3用量)。LVEF ≤35%群では左室収縮末期容積係数(LVESVI)が5.4 mL/m²減少(20 mg)。LVEF 41〜55%群では体血管抵抗係数(SVRi)が19%(20 mg)/21%(80 mg)/15%(360 mg)減少。最低用量の20 mgが最も良好で、受容体の脱感作が要因として指摘されている。LVEF 41〜55%群には新分類でいうHFrEF(41〜49%)とHFpEF(50〜55%)が混在しており、今後どちらの表現型の話として解釈し直すのかが論点となる。死亡・入院の抑制を示したものではない。

出典:pharmaphorum(Circulation掲載・ESC 2026発表) · 確認 2026-09-09 · ※二次情報のみ
2026年9月4日
試験データ

Novo Nordisk「ziltivekimab」HERMES試験、無益中止

HERMES試験(n=4,900)の組入れ基準はLVEF >40%、かつhsCRP ≥2 mg/L。すなわち「HFmrEF/HFpEF」を一つの集団として括る設計だった。新ガイドラインではこの集団は50%を境にHFrEFとHFpEFへ分かれる。つまりこの試験が標的にしていた患者像は、結果が出る前に定義そのものが解体されていたことになる。中止の理由はあくまで無益性であり分類変更とは無関係だが、「40%で括る」という設計思想が一つの区切りを迎えつつあることを象徴的に示す出来事となった。

出典:ATHENA/HERMES試験デザイン論文(European Journal of Heart Failure) · 確認 2026-09-09

今後の見方

今後1〜2年で読み出される心不全試験の多くは、旧分類(40%基準)で組まれたものである。「試験の組入れ基準」と「ガイドラインの表現型」がズレたまま走る期間がしばらく続くため、今後の試験結果を読む際は、表現型のラベルではなくLVEFの実際の分布に目を向ける必要がある。

前提 — 対象期間より前の出来事

  • 背景
    ESC 2026の心不全ガイドライン(8月28日、European Heart Journal掲載)はHFmrEF(LVEF 41〜49%)という区分を廃止し、LVEF 50%を唯一の境界線とする2表現型に再編した。HFrEF:LVEF <50%/HFpEF:LVEF ≥50%。旧HFmrEFはHFpEF側ではなくHFrEF側に統合されている。あわせて治療の呼称もfoundational medical therapy/additional medical therapy/guideline-directed interventional therapyの3分類に整理された。
02 / 不整脈

不整脈

1 件
2026年9月8日
FDA 承認

Abbott「TactiFlex Duo」、FDA承認

PFAとRFを1本に統合したカテーテル。Abbottはこれを「1年強で5件目となる電気生理学領域の主要承認」と位置づけている。内訳は2025年のVolt PFAシステムの米欧承認、そして2026年のAmulet 360およびTactiFlex DuoのCEマーク取得。なおAmulet 360のCEマーク取得は8月27日(本号の対象期間外)で、同時にFrankfurt・Lübeck・Aarhusでの欧州初症例も発表されている。

出典:Abbott 公式(Amulet 360 CEマーク、8月27日) · 確認 2026-09-09
03 / 弁膜症・構造的心疾患

弁膜症・構造的心疾患

2 件
2026年9月1日
企業動向

Medtronic、Pi-Cardiaへ戦略的投資と独占販売契約

弁尖修飾(leaflet modification)技術を持つPi-Cardiaに最大8,000万ドルを出資し、あわせて同社「ShortCut」のグローバル独占販売権を取得(2027年開始見込み)。マイルストーン達成を条件に、最大2.1億ドルでの買収オプションとアーンアウトが付帯。ShortCutは、valve-in-valve TAVR時に旧弁の弁尖が冠動脈を閉塞するリスクを回避するため弁尖を切開する、FDA承認済みデバイス。出資よりむしろ販売権取得が戦略の核と読める。

出典:Medtronic 公式リリース · 確認 2026-09-09
2026年9月1日
保険償還 · 日本

【国内】サピエン3 Ultra RESILIAシステムが保険適用

経カテーテル的心臓弁留置用のバルーン拡張型人工生体弁(ウシ心のう膜弁)システム(20/23/26/29mm、エドワーズライフサイエンス合同会社)。保険償還価格494万円、区分C1(新機能)。機能区分は「182 経カテーテル人工生体弁セット (1)バルーン拡張型人工生体弁セット ②特殊型」。承認番号 22800BZX00094000。

出典:厚生労働省保険局医療課 事務連絡(令和8年8月31日) · 確認 2026-09-09
04 / 製薬・デバイス企業

製薬・デバイス企業

2 件
2026年9月5日
市場の見方

Lp(a)・IL-6クラス全体への波及

pelacarsenとziltivekimabの連続失敗を受け、Amgen(olpasiran)、Eli Lilly(muvalaplin)、Silence Therapeutics(zerlasiran)など同クラスの開発品にも懸念が広がっている。アナリストは同クラスの進行中試験に「意味のあるリスク」があるとし、より深いLp(a)阻害を達成する薬剤のみが成功しうるとの見方も示されている。

出典:BioPharma Dive · 確認 2026-09-09 · ※二次情報のみ
2026年9月2日
資金調達

Elucid、Series Dで5,500万ドルを調達

冠動脈CTからAIでプラーク性状を解析するFFR-CT・Plaque-IQを手掛ける新興企業。累計調達額は1.85億ドル。今回のラウンドには同社にとって4社目となる上場戦略投資家(大手医療機器企業、社名非開示)が参加し、IAG Capital PartnersとElevage Medical Technologies(Patient Square Capitalのプラットフォーム)も加わった。FFR-CT製品はFDAへ510(k)申請中。非侵襲診断領域の注目プレーヤー。

出典:Elucid 公式リリース · 確認 2026-09-09
05 / その他

その他

0 件

今週の更新

本週間で特筆すべき更新は確認されなかった。

今週の視点

「新しい標的」より「確立した標的の深掘り」が勝った週だった。Lp(a)も炎症(IL-6)も、疫学的にはこれ以上ないほど強い関連が示されてきた標的である。それでも介入試験ではアウトカムに結びつかなかった。一方でLDL-C低下という古くからの標的は、VESALIUS-CVで一次予防にまで裾野を広げつつある。そして心不全では、ガイドラインが線を引き直した直後に、古い線で組まれた試験が2本並んで表に出てきた。片方は無益中止、もう片方は新旧の境界をまたぐコホート設計。この「ズレ」は、今後1〜2年の心不全試験を読むうえで繰り返し意識することになりそうだ。デバイス側では、Abbottがエレクトロフィジオロジーで、MedtronicがTAVRの複雑症例対応で、それぞれ次の一手を打った。国内でもサピエン3 Ultra RESILIAの保険収載が実現している。薬剤とデバイスで明暗が分かれた一週間だった。

関連する演題締切

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締切学会開催リンク
2027 abstract window not yet announced. For reference, the 2…未発表ESC Congress 2027(欧州心臓病学会)欧州European Society of Cardiology確認 2026-09-032027/08/27–30Milan · Italy
2026/10/29(木)Abstracts 29 Oct 2026; clinical cases 5 Nov 2026; congress g…あと47日ESC Acute CardioVascular Care 2027(欧州急性心血管ケア学会 ACVC)欧州Association for Acute CardioVascular Care (ESC)確認 2026-09-032027/03/19–20Seville · Spain
2026/10/06(火)1 p.m. ET · Abstracts & cases: Aug 25 – Oct 6, 2026, 1 p.m. ET. Late-Bre…あと24日ACC.27(米国心臓病学会 年次学術集会)米国American College of Cardiology確認 2026-09-032027/04/10–12Houston · USA
2026/09/16(水)午前6:00(時間厳守) · 一般演題・症例報告・チーム医療セッション:2026-07-06(月)10:00 開始、2026-09-16(水)午前6:…あと4日第91回日本循環器学会学術集会(JCS2027)/APSC2027同時開催国内学術集会日本循環器学会確認 2026-09-032027/03/26–28横浜 · パシフィコ横浜

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